拝啓、愛しのパイロット様
(乾さん、早く来られるといいんだけど)
発起人の乾が不在の中、ひとりで鰻重をつつくのもなんだか寂しい。
そんなことを考えながら、ふと廊下の先に視線を向けたそのときだ。
「よう」
廊下の反対側から神城がニヤニヤと気色の悪い薄ら笑いを浮かべながら、こちらへ歩いてくるのを発見してしまった。
(うわあ……。よりにもよって)
札幌出張を命じられてから、嫌がらせはとんとやんでいたから、すっかり油断していた。
本音を言えば回れ右をして引き返したいところだが、時すでに遅し。見通しのいい廊下には、どこにも逃げ場がない。
「コンペの件、残念だったなあ」
小町の目の前で立ち止まった神城はわざとらしい下手な演技を交えながら、コンペの健闘を讃えた。
彼が落選を残念に思っていないのは明らかだ。にっこりと歪んだ目からは、ざまあみろという心の声が透けて見える。
「いえ。今回がダメでも次がありますから」
本心を曝け出し悔しそうな姿を見せて、喜ばせることはない。
小町はツンとした態度を崩さず、強気で言い放った。
「次?アハハッ!」
ところが神城は即座に噴き出し、腹を抱えて笑い始めた。