拝啓、愛しのパイロット様

「なにがおかしいんですか?」

 突然笑いものにされて腹立たしいと思いながらもその理由を尋ねても、神城は笑ってばかりだ。

「お前の企画書が採用されるわけないだろう?」
「どういう意味でしょうか?」

 ようやくまともな答えが聞けたものの、意味が分からず眉をひそめて聞き返す。
 すると、神城はすっと小町に近づき耳もとで囁いた。

「企画書を握りつぶしたのは俺だ」

 いかにも楽しげなその口調に、小町は大きく目を見開いた。
 なにを言われているのか意味がわからず混乱している間に、神城はさらに畳み掛ける。

「俺がいる限り、お前の企画書は絶対に採用されない」

 浴びせかけられた言葉の意味を理解した瞬間、背筋が凍っていくのがわかった。
 たまりにたまった鬱憤をすべて吐き出すかのように毒を吐くその表情は、御曹司という肩書きに不釣り合いなほど醜く歪んでいた。

「目障りなんだよ。ひとの気持ちを踏みにじった分際でいつまでこの会社にいやがるつもりだ」

 神城がプライドを傷つけられた腹いせに小町を会社から追い出そうとしているのは明らかだった。

(神城部長が裏から手を回していた?)

 衝撃の事実を伝えられ、唇が震えてうまく声が出せなくなる。
 神城はスターライト文具本社の後継者だ。今回のコンペにもなんらかの形で関わっていてもおかしくはない。

 もし神城の言うように、小町の企画書が裏で握りつぶされていたとしたら。

(私は文房具作りに携わらせてもらえないってこと?)

 頭の中が絶望に支配されていったそのとき。

「小町さ~ん!」

 暗く翳っていた表情を明るく照らす、ひだまりのような乾の声が聞こえてくる。

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