拝啓、愛しのパイロット様
(疲れた……)
午後の仕事をなんとかこなして帰宅した小町は、リビングに足を踏み入れるやいなやローテーブルに突っ伏した。
本当ならシャワーを浴びてメイクを落としてしまいたかったけれど、そんな元気もない。
(悔しい)
いっそのこと、すべて夢だったらいいのにと願いながらぎゅっと目を瞑る。
ずっと仕事に本気で向き合ってきたからこその無力感だ。
そのまま動けなくなってから、どれだけの時間が経っただろう。
「どうした?電気もつけないで」
突然周りが明るくなりテーブルからゆっくり顔を上げ、後ろを振り返ると由桔也が立っていた。
「その様子だとコンペはダメだったんだな」
悔しさと苛立ちで情けない顔が照明の下で露わにされたのか、由桔也はすべてを察したらしい。
「コンペはまた開催されるんだろう?今回は残念な結果になったけど、諦めなければ今度はきっと採用されるよ」
そう慰めると、小町を労うように頭を撫でる。
なんの根拠もない無責任な励ましは小町を苛立たせ、隠していた感情を剥きだしにさせた。
「口先だけの甘い言葉なんていりません」
小町は強い口調で由桔也の手を払いのけた。
コンペ落選の裏に神城の妨害があったことを由桔也は知らない。
前向きな声かけは、小町を鼓舞するつもりで口にしたのだろう。
以前なら素直に受け入れられたはずの言葉が、彼の言動すべてに疑いの目を向けている今となっては、どうしても薄っぺらく聞こえた。