拝啓、愛しのパイロット様

「小町……」

 由桔也はなにかを言おうと口を開いたものの、途中で顔を伏せてしまった。

「今の小町にはなにを言っても信じてもらえそうにないな。でもこれだけは言っておく。俺が好きなのは小町だけだ」

 そう告げると、小町に背を向ける。

「しばらく実家に泊まる。個展の搬入の準備があるんだ。展示する作品を梱包したり、色々とやらなきゃいけないこともある」

 たしかに、実登里の個展まであと二週間を切っている。
 実登里ひとりですべての準備をするのは難しいだろう。

「個展が終わったら戻ってくるから、そのときにもう一度話し合おう」

 お互い冷静になるために、少し距離を取ろうというつもりなのだろう。

 由桔也は慣れた手つきで荷造りを済ませると、大きなスーツケースを携えてマンションから出て行った。

 うしろ姿が見えなくなった途端に、身体の力が抜けていく。
 由桔也と離れられて、あきらかにホッとしている自分もいる一方で、今すぐ彼に縋りつきたい気持ちもあった。
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