拝啓、愛しのパイロット様
「あ、あのっ!私、今から空港に行ってきます!」
「え?」
ふたりが呆気に取られている間に、バックヤードへ走り慌ただしくトートバッグとコートを掴んで受付まで戻る。
「由桔也さんの無事を確かめてきます!」
決意を込めて宣言すると、栞奈も賛同するようにうんうんと頷いた。
「そうよね。ここに座っていても、なにかわかるわけでもないし。私たちはまだギャラリーから離れられないし、お願いするわ」
「よろしくね、小町さん」
実登里はぎゅっと小町の手を握り、息子の安否を委ねてくれた。
本当なら心配でたまらないだろうに、必死で堪えているのだろう。
「はい。行ってきます」
小町はふたりに頭を下げてからギャラリーを飛び出し、すぐさまタクシーを捕まえ飛び乗った。
「羽田空港まで!」
運転手に早口で伝えたあとは、膝の上で重ねた手を握りしめ、由桔也の無事をひたすら祈る。
(お願い。無事でいて)
当たり前の日常があっけなく終わると知っていたのに、なぜもっと早く自分の気持ちを伝えなかったのだろう。
両親から捨てられたという劣等感を言い訳にして、はぐらかしてばかりだった。
本当は最初に出会ったときからどうしようもなく惹かれていたくせに。
(こんな形で終わりにしたくない)
小町はタクシーの小さな窓から、空を行き交う飛行機を食い入るように眺め続けた。