拝啓、愛しのパイロット様
(ここまで来たのに……)
小町はすごすごとカウンターから離れるしかなかった。
事故の詳しい話が聞けるかもしれないと藁にもすがる思いで空港までやって来たわけだが、関係者でもない小町は当然のごとく門前払いだ。
当たり前のことに思い至らず、情けなくて思わず涙が出そうになる。
しかし、ここまで来て手ぶらでは帰れない。
カウンターにいるスタッフの他に、話が聞けそうな人がいないかと思い立ち、周囲に視線を巡らせたそのとき。
「小町?」
名前を呼ばれうしろを振り返ると、なんと私服姿の由桔也が立っていた。
「どうして空港にいるんだ?今日は個展の日だろう?」
不思議そうに首を傾げるその姿は夢でも幻でもなさそうだ。
もし幽霊なら、彼が愛用しているスーツケースを携えているのはやっぱり変だ。