拝啓、愛しのパイロット様
(あれ?)
意気揚々と出社した小町は、営業部長のデスクがもぬけの殻になっていると気づき、首を傾げた。
出しっぱなしの販促サンプルも、整理されていない雑多な書類も、なぜか綺麗さっぱりなくなっている。
「おはようございます、小町さん」
「おはよう、乾さん。なにかあったの?」
先に出社していた乾に尋ねてみるが、彼女も不安げに瞳を揺らす。
「それが、わからないんです。私が来たときはもうこの状態で」
つまり、誰かが昨日まで神城が踏ん反り返っていたこのデスクを、終業後から早朝までの短い間で片付けということだ。
どうやら単なる病欠や欠勤ではなさそうだ。
結局、始業時間が過ぎても、神城は出社してこなかった。
不穏な気配を感じつつ、主が不在の部長のデスクをなんとなく気にしながら業務に勤しんでいたそのとき。
パンパンと手が叩く乾いた音が、フロアの中に鳴り響く。
「営業部の皆さん。手を止めてこちらに来てください」
そう言って、仰々しく営業部の人間を一箇所に集めたのは、営業部の上役でもあるスターライト文具の専務だ。
(どうして専務が営業部に?)
役員と顔を合わせる機会はそう多くない。
何事かと訝しみながら、話に耳を傾けると、神城が出社しなかった理由が明らかにされる。