拝啓、愛しのパイロット様
「神城貢は昨日付けで我が社を懲戒解雇となった。後任の人事は追って連絡する。くれぐれも通常業務はおろそかにしないように」
専務がそう告げた直後、営業部全員にどよめきが走る。
(懲戒解雇!?)
神城がスターライト文具の社長の息子だったのは、誰もが知る事実だ。
その彼が懲戒解雇されるなんて、一体どんな理由があったのだろう。
専務が去ってから営業部には、さまざまな憶測が流れ始める。
部内全体が浮き足だち、業務が再開されるまでに三十分もかかった。
ところが、ようやく静けさを取り戻したオフィスに、今度はけたたましい電話の音が鳴り始める。
「はい、営業部です」
軽やかな手つきで電話を取ったのは乾だ。
「承知いたしました。伝えておきます」
乾は二、三の会話のやり取りを終え受話器を置くなり、困惑した表情を浮かべながら小町のもとへやって来た。
「どうしたの?」
「小町さん、社長が今すぐ社長室に来てほしいそうです」
「え?」
社長直々の呼び出しとあっては、とても心中穏やかではいられない。
「わかった。ありがとう、乾さん。すぐ行くね」
それでも小町は心配そうな乾を安心させるように肩をポンと叩くと、言われた通り上層階にある社長室へと向かった。