拝啓、愛しのパイロット様
「あの……神城部長はどうして懲戒解雇になったのでしょうか?」
一社員が口にするべき話ではないとわかっているが、それでも尋ねずにはいられなかった。
神城はスターライト文具の後継者だったはずなのに、神城社長は自らの手で息子を懲戒解雇にしたのだ。
それ相応の理由がなければ、決断できないはずだ。
「そうか。君は息子の直属の部下だったんだね」
「はい」
神城社長は小さな背中で大きなため息をついた。
「いずれ知れ渡ることだから、話しておこう。息子は会社の金に手を出していたんだ」
「え!?」
思いがけず大きな声が出てしまい、慌てて口を押さえる。
「幸いにも経理部の社員が異変に気づいて、すぐに報告してくれたおかげで被害は少なかったが、看過できることではない」
神城社長はなおも苦々しい表情をしていた。
もし発見が遅れていたら、会社の経営そのものが危ぶまれる事態だったのだろう。
「これまで色々と目に余るところがあっても、その都度言い含めてきたが、今回ばかりは呆れてものが言えない。息子は今後一切経営に関わらせないから安心して働いてほしい」
「そうですか……」
神城社長の口調には断固とした決意が表れていて、不謹慎だがホッとしてしまった。