拝啓、愛しのパイロット様

 ◇

 夢が現実になったのは、神城がスターライト文具を去り、小町がプロジェクトチームに迎え入れられてから一年ほどあとのことだ。

 毎日頭が沸騰しそうになりながら、あれこれとアイディアを練り上げる日々は本当に楽しかった。

 営業部で働いているときもやりがいを感じていたけれど、開発チームの熱量は凄まじく、また違う充実感と達成感で胸が満たされた。

 プロジェクトがひと段落して営業部に戻ってきた今でも、あの熱が余韻として残っているくらいだ。

 苦心したかいもあり、小町が考えたいちごのペンケースのリメイク作品は昨今のレトロブームに乗り、スターライト文具創業以来、最高の売り上げを記録した。

 製菓メーカーとのコラボも決定し、来月からはいちご味のチョコ菓子が発売される予定だ。

 華々しくあちこちのメディアで取り上げられているのを見ると、成長していく我が子を見守る母親のような気持ちすら感じる。

(私はやっぱり文房具が好きなんだ)

 おそらくこれから先の人生も、大好きな文房具に囲まれて暮らすのだろう。

(また文房具開発に携わりたい)

 そう思っていた矢先に十月から開発部へ異動しないかと打診があった。

 新しい営業部長の後押しもあり、小町は快く異動を受け入れた。

 慌ただしく業務の引き継ぎを行なっていく中で、乾は何度も別れを惜しんでくれた。

 そんな風に忙しい日々を過ごしていたある休日のことである。

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