拝啓、愛しのパイロット様
「こんなところがあるんですね」
小町は風で靡く髪を左手で押さえながら、感心して呟いた。
空港に到着し仕事終わりの由桔也と合流したあとで連れて来られたのは、空港内にある屋上展望デッキだ。
「いい眺めだろう?」
先ほどハワイから到着したばかりの由桔也は、疲れた様子など一切見せずに笑いかけた。
展望デッキからは、轟音とともに飛行機が離陸していくさまを観察できる人気スポットらしい。
夜七時過ぎの今は、見物客もそれほど多くない。
数分おきに飛行機が離陸する際のエンジン音が聞こえてきて、周囲の雑音をすべてさらっていく。
ふたりはしばらく誘導灯がポツポツと見える滑走路を見ていた。
「寒くないか?」
「平気です」
そう答えたのに、由桔也は風の当たらないように位置を交換し、身を挺して風除けとなってくれた。
「ほら、もっとこっちに寄って」
肩を抱かれ身体を密着するも、一瞬で意識が彼の方へ向く。
小町は頼もしい恋人の横顔をこっそりと盗み見た。
涼しい顔をしているが、うちに秘めた情熱には恋人となったあとでも驚かされる。
住んでいた部屋を引き払い、そのまま一緒に暮らし始めて一年が経つ。
一年も一緒に生活していれば、それなりにおざなりになる部分もあるだろうが、彼は今でもステイ先から手紙を書いて送ってくる。
『愛してる』『俺には小町だけだ』なんて、少しきどったセリフをサラリと書いてくるときもあって、不覚にもドキリとさせられる。
もしかしたら、小町を喜ばそうと少しばかり大げさに書いているのかもしれない。