拝啓、愛しのパイロット様
「今、読んでいいか?」
小町が小さく頷いたのを確認したあと、由桔也は封筒の封を開け便箋を取り出した。
彼が手紙に目を通している間、生きた心地がしなかった。
目の前で手紙を読まれるのがこんなに恥ずかしいなんて知らなかったし、知りたくなかった。
(ああもう!)
穴があったら今すぐ入りたい気持ちでいっぱいだ。
遮るものがない展望デッキには容赦なく潮風が吹きつけていて、まだ夏の名残りがあるとはいえ肌寒い。
瞬く間に上がった体温を冷ますにはちょうどいいくらいだ。
数分後、手紙を読み終わった由桔也は弾けんばかりの満面の笑みを浮かべていた。
「こんな熱烈なラブレター、初めてもらったよ」
「からかわないでください……。あのときは本当に切羽詰まっていたんですから!」
小町はこの期に及んでからかおうとする由桔也を恨めしげに見つめながら、必死になって弁解した。
我ながら恥ずかしいくらいに『由桔也さんが好き』としか読み解けない稚拙なラブレターだ。
(だから渡したくなかったのに……!)
手紙を渡したことを後悔しかけていると、由桔也は便箋をジャケットの懐にしまいながら不敵に微笑んだ。