拝啓、愛しのパイロット様
「仁科さん」
「は、はいっ!」
ふいに名前を呼ばれ、ビクンと肩を揺らしながら顔を上げると、由桔也はテーブルに頬杖をついて、小町をまじまじと見つめていた。
「もうひとつ頼みごとがあるんだけどいいか?」
「あ、え?なんでしょうか?」
「実は個展開催のお祝いに母になにか贈ろうと考えているんだけど、選ぶのを手伝ってくれないか?俺が選ぶより仁科さんが選んだ方が母も喜ぶと思うし」
「私でいいんですか?」
もちろんとばかりに、由桔也は大きく頷いた。
「母はよく仁科さんの話をしているんだ。いつも熱心に取り組んでいる生徒さんがいるって。自分も負けないようにがんばりたいって。だからこそ君に選ぶのを手伝って欲しいんだ」
真剣な表情で頼み込まれ、小町は少し悩んだ。
実登里が小町をそんな風に見てくれていたなんて、全然知らなかった。
少しでも上手になりたいという向上心を、ちゃんと見抜いてくれたのだと思うと、胸の中に温かいものが広がっていく。
すっかり気分がよくなった小町はニコリと微笑んだ。
「私でよければ喜んで」
「決まりだな。また連絡する」
「わかりました」
連絡先を交換したふたりは再会を約束し、その日は解散となった。