拝啓、愛しのパイロット様
「まったまた~!それにしては張り切ってるじゃないですか!」
なおも小町をからかおうとする乾の目は爛々と輝いている。
ここ数年浮いた話ひとつない小町から恋バナの気配を感じとり、飢えた獣のように話題を欲しているのだ。
「本当に違うから!ほら、乾さん!午後の打ち合わせが始まるんじゃない?」
「あっ!いけない!」
乾は時計を見るなり、ノートパソコンを持ち、会議室へと足早に駆けて行った。
注意を逸らすことに成功し、ようやくあたりが静かになったあとで、人知れず息をつく。
(由桔也さんが彼氏なんて恐れ多いよ)
見た目もさることながら、パイロットという憧れの職業に就く彼に、自分が相応しいとは到底思えない。
(プレゼントを一緒に買い物に行くだけだから!)
なんとなく浮き立つ気持ちは、見て見ぬ振りをするべきだろう。
小町は『ただの買い物』だと、自分に言い聞かせながら、ひたすらパソコンに向かった。