拝啓、愛しのパイロット様
(そろそろ出ようかな)
定時になると小町は即座にパソコンの電源を落とし、席を立った。
今日だけは残業をするわけにはいかないと、無心で取り組んだ結果、いつもより余裕を持って仕事を終わらせられた。
神城に邪魔をされなかったのも、定時退社ができた一因だろう。
(これなら早く着きそう)
左腕を持ち上げ、腕時計で時刻を確認すると、針は六時半を指していた。由桔也とは某有名デパートのエントランス前で、七時に待ち合わせしている。
デパートは会社の最寄駅の隣の駅だ。電車を使ってもいいが、歩いても十五分ぐらいで到着できる。
(時間もあるし、のんびり歩いて行こうかな)
帰る前に化粧室に立ち寄り、メイクを軽く直してから、会社をあとにする。
スマホで経路を確認しつつ、デパートへと一歩足を踏み出した次の瞬間。
「仁科さん」
誰かに話しかけられ、クルリと後ろを振り返った小町は、うっと呻き声をあげてしまった。
「か、神城部長……」
「今日は早かったな」
小町が帰るところを待ち受けていたのか、神城が片手を上げながら、こちらに歩いてくる。
わざわざ呼び止められるなんて、嫌な予感しかしない。