拝啓、愛しのパイロット様
「さあ、行こうか」
神城はいきなり小町の肩を抱くと、そのままあらぬ方向へ歩き出そうとした。
無遠慮に触れられて、ゾワリと背中に悪寒が走る。
「な、なにをするんですか!?」
突然のことで、小町は身体を縮こませて、うろたえるばかりだった。
「上司として、部下の期待には応えてあげないとな」
「期待?」
「俺と食事に行きたいからいつもより着飾っているんだろう?誘ってほしくてチラチラとこちらを見ていたじゃないか」
神城の自分勝手な解釈を聞いた小町は絶句した。
呆れてものが言えなくなるとは、まさにこのことだ。
いつ、誰が、一緒に食事に行きたいなどと口にしたのだろう。
様子を窺っていたのは、余計な仕事を頼まれないようにその動向を窺っていたからだ。
「は、放してください!」
「照れなくてもいいだろう?俺と仁科さんの仲なんだし」
「照れてません!」
誰が誰とどういう仲にあるのか、徹底的に議論したくなるが、話が通じそうもなくて、次第にそら恐ろしくなってくる。
今まで彼に幾度となく困らされてきたが、こんにに強引な手段に打って出られたことはない。
社長の息子だからと遠慮して、正面切って嫌だと訴えてこなかったのが完全に裏目にでている。
だからといって、このままどこぞへ連れて行かれるわけにはいかない。