拝啓、愛しのパイロット様
「うわあ!かわいい!」
店内をあちこち彷徨っていた小町が手に取ったのは、いちご柄のペンケースだ。
筒型のフォルムはビニール素材でできており、軽くて丈夫そうだ。ファスナーはヘタを表した緑色で、いちごのチャームがついている。
「あら、かわいいわねえ。今どきはこんなにかわいい文房具があるのねえ」
「私、これにする!」
小町はペンケースを大事にカゴの中へ入れた。
他にもウサギのキャラクターがプリントされたノート、パステルカラーの色鉛筆。
ノブ部分にダイアモンド型のガラス玉がつけられたシャーペンを買ってもらった。
小学生の小町にはどれもが眩しく、輝いて見えた。
新調した文房具を使うのが、楽しみでたまらなくなる。
実の親に捨てられたという過酷な現実だって忘れられた。
きっとこのとき、小町は文房具の魅力に憑りつかれたのだろう。