拝啓、愛しのパイロット様
「はあ!?婚約者だって……!?ふざけるなよっ!」
ここが往来だということも忘れ、口汚く罵声を浴びせかけるその姿からは、理性が完全に失われていた。
神城にしてみれば、好かれていると思っていたから優しくしてやったのに、裏切られた気持ちなのだろう。
「ふざけているのはどちらですか?」
どこまでも上から目線の怒りなど、由桔也にとってはなんてことはない。
「あなたがよかれと思ってした行為について、いくつか聞いておきたいことがあります。特に、婚約者がいる彼女のマンションに、許可なく立ち入った理由をぜひお聞かせ願えないでしょうか?」
感情的になる神城を嘲笑うように淡々と告げると、最後には冷ややかに見下ろす。
「う……」
神城は途端に押し黙った。
スターライト文具の社員である小町とは違い、由桔也には御曹司の威光が通じないとわかったのだ。
「お、俺は忙しいんだ!そんな暇なんてない!」
神城は盛大な捨て台詞を吐くと、逃げるように小町たちの脇をすり抜け、エントランスまで早足で歩いて行った。
後ろ姿が見えなくなったところで、小町はほっと息をついた。