拝啓、愛しのパイロット様
(婚約者がいたのが、よほど気に食わなかったのね)
相思相愛だと疑っていなかったのに、突然婚約者を名乗る男が現れ、自分の立場がなくなってしまった。
神城にとっては屈辱そのものでもあり、恥をかかされた小町には罰を与えなければ気が済まないのだろう。
幼稚な思考回路に辟易するが、だからといって乾に愚痴るわけにもいかない。
「部長に命じられたし、倉庫に行ってくるね」
大勢の前で命じられた手前、指示を無視できず、小町は再び椅子から立ち上がった。
「私も手伝いますよ!ひとりじゃ大変ですし」
「いいよ!大丈夫!私を手伝ったことが部長にバレたら、乾さんまで睨まれちゃうよ」
小町は余計な心配をかけまいと、あえて明るく振る舞って申し出を断った。
「でも……」
「本当に大丈夫だから。ね?ほら、乾さんは来月発売の多機能マーカーの店頭展開案でも考えておいてよ。戻ってきたら、チェックするからね」
「……はい」
話をそらし、意識を仕事にすり替えると、乾は不満げに口をすぼめながらも渋々引き下がる。
(乾さんを巻き込んだら大変だもんね)
実際、ありがたすぎる申し出だったが、なにも知らない彼女にまで被害が及ぶのは避けたい。