拝啓、愛しのパイロット様

 小町は営業部を出ると、廊下の突き当りにある倉庫までひとりで向かった。

「うわあ……」

 窓もなく埃っぽい倉庫に足を踏み入れた瞬間、思わず眉をひそめる。

 倉庫の中には、これまでスターライト文具で発売されてきた文具のサンプルや、使わなくなった販促グッズのパネルなどが乱雑に置かれていた。

 一年に一度、年末に数人がかりで掃除していても追いつかないぐらい物が多く、足の踏み場もないほどだ。

(早く片づけて仕事の続きをしなくちゃ)

 小町は汚れないようにブラウスの袖を捲り上げると、隙間なく埋まっている棚をひとつひとつ丁寧に整理していった。

(いつまでこんな状態が続くんだろう)

 愛と憎しみは表裏一体。可愛さ余って憎さ百倍。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。

 自分の思い通りにならなかったからという、子どもの癇癪のような無茶振りにはうんざりさせられる。

 地味な嫌がらせばかりで気が滅入りそうになる。

 それでも、自分で決めた以上、神城の気が収まるまで気長に待つしかない。
 結局その日、倉庫の整理は夜遅くまで続いたのだった。

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