拝啓、愛しのパイロット様

「色々と大変なのは小町さんの方じゃない。困ったことがあったらなんでも言ってちょうだいね。これでも、色々とお付き合いがあるの。腕のいい弁護士さんも知っているし紹介できるわ」
「ありがとうございます」

 温かな気遣いに、小町は改めてお礼を言った。
 由桔也といい、実登里といい、宇佐美家の人たちは小町に優しすぎる。

「母さん、しゃべってばかりいないでそろそろ本題に入ったら?」

 話し込んでいる内にいつの間にか由桔也が呆れ顔で後ろに立っていた。淹れたてのコーヒーを三つテーブルに置き、小町の隣に座る。

「そうね。私ってばすっかり夢中になっちゃったわ」

 実登里はバッグの中から、書道作品専用のファイルを取り出した。シワができないように持ち歩ける便利なもので、小町もよく使っている。

「どうかしら?」
「うわあ!どれも素敵ですね」

 実登里がファイルを開くなり、小町は歓声を上げた。
 ファイルの中には彼女が書いたと思しき、三つの書が収められていた。

『絆』、『夢』、『華』、どれも実登里らしい、生き生きとした躍動感のあふれる文字になっている。

「ねえ、小町さん。どれがいいと思う?」

 記念品のポストカードに印刷する字を書き下ろしたはいいものの、ひとつに絞りきれなかったらしい。
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