拝啓、愛しのパイロット様
「悪いな。せっかくの休日だったのに個展の打ち合わせなんて。疲れているんじゃないか?」
「あ、いえ!全然っ!」
実登里が帰宅し、プレートとコーヒーカップを片づけていたら、由桔也から申し訳なさそうに謝られてしまう。
「でも、最近は夜も遅いだろう?俺が深夜に帰ってきてもまだ起きてるみたいだし、疲れているんじゃないか?」
痛いところを突かれ、由桔也の観察眼の鋭さに舌を巻く。
疲れていないと言えば嘘になる。
神城に適当な理由をつけて業務外の雑用を押しつけられているため、最近は遅れた分の仕事を家に持ち帰ってこなしていた。
「あれから会社ではどうだ?例の上司の様子は?」
「前みたいにしつこく迫られることは、なくなりましたね。やっぱり婚約者っていうのがきいたみたいです」
嘘をつく必要はないが、事実をありのまま伝えるのには抵抗がある。
神城から目の敵のように扱われていることは、あえて話さなかった。
ありがたいことに、地味な嫌がらせをされる方が、品定めのように上から下まで見つめられるより数倍もマシだ。
「そうか……」
小町の説明に納得したのか、していないのか。
由桔也はなにかを考え込むように口をつぐみ、使った食器類をキッチンに持っていった。
かと思えば、書斎に戻ろうとする小町に再び声をかける。