拝啓、愛しのパイロット様
「あのさ、これから時間ある?」
「特に予定はありませんけど……」
「買い物に付き合ってほしい」
「今からですか?」
いつも事前にスケジュールのお伺いを立ててくる由桔也にしては珍しい、急なお願いだ。
「前々から仕事で使う文房具を買い替えようと思っていたんだ。小町のおすすめを紹介してくれないか?」
文房具と聞いて、小町はにわかに色めき立った。興奮で頬が緩み、手に力がこもる。
「本当に私がご紹介してもいいんですか?」
「ああ」
念を押すように尋ねると、由桔也は深く頷いた。
「わかりました。行きましょう!」
これがオタクの性なのだろう。
ひとりで文房具店巡りをするのも楽しいけれど、好きな物を紹介してほしいと言われたら、俄然やる気になる。
「よし、決まりだな。じゃあ十分後に出発な」
由桔也はぽんぽんと優しく小町の頭を撫でると、自室に車のキーを取りに行った。
ひとりになると彼に撫でられた頭にそっと触れる。
(もしかして、気を使ってくれたのかな?)
文房具と聞いて、なにも考えずにOKを出してしまったけれど、元気のない小町の様子を見て、一番喜ぶ提案をしてくれたのかもしれない。
(私って本当に単純だな)
由桔也にまんまとしてやられた気がした。