あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
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「──でね!?私、結婚式の作法とかあんまり知らないから、里英教えてくれない!?」
すっかりお馴染みになった里英の家のリビングで、生後六ヶ月になった咲良ちゃんをあやす里英に向かって両手を合わせた。
「和泉、あんたねぇ。何かあるたびにうちに来る癖、どうにかしなさいよね」
「だって私のこと全部知ってるの里英くらいなんだもん!」
「そんなの、北ヶ瀬さんに直接聞いたほうが早いに決まってるじゃん」
「そ、そうだけどさぁ」
北ヶ瀬さんと気軽に会えなくなった理由がある。
〝僕達は、友達──……でしたね〟
彼の口からはっきりとそう線引きされたせいだ。
「食事に誘われたのはいいけど、これってあくまで『結婚式の打ち合わせ』ってことでしょ?あの夜、向こうから『友達でしたね』ってはっきり言われちゃってるわけだし……どういう顔して会えばいいのか全然分かんないよぉ」
「はぁ、ったく!ここは愚痴吐き場じゃないんだからね!?」
私のウジウジとした悩みを遮るように、ミルクの入った哺乳瓶を揺らす里英がは呆れたようなため息を落とした。
「そもそも、なんだけどさ?どうして和泉が北ヶ瀬さんのお兄さんの結婚式に一緒に参加しなくちゃいけないのか、その理由ってちゃんと聞いてるの?」
「え、理由?」
「普通はさ、恋人がいないなら北ヶ瀬さん一人で出席したってなんの問題もないじゃない?なのに、そこにわざわざ和泉を連れて行かなくちゃいけない理由ってなんだろうなって」
「……確かに」
今まで考えてもいなかった。
なんとなく、パートナーいたほうがいいのかな、くらいにしか考えていなかったけれど、これも里英の言うとおりだ。
「友達の結婚式に参列してほしい、とかならさ?まだなんとなく分かる気もするんだけど、自分のお兄さんの式でしょ?しかも北ヶ瀬さんの実家はあの呉服店となると……ね?」
窓の外から聞こえる冬の冷たい風の音だけが、静まり返ったリビングに響く。
寒さのせいで軋む右腕を、私はそっと押さえた。