あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
◆第8話:「北ヶ瀬さんと一緒にいられない理由」
「和泉さん、右腕の調子はいかがですか?」
「あ、もう痛みも全然なくて。ただ、まだお箸はうまく使えないんですけど……」
「まだ不憫なことが多いようですね。なら、食べやすいように切りましょう」
北ヶ瀬さんから連絡をもらって、私達は都内の個室付きのレストランで向かい合っていた。
ギプスはまだ外れていないものの、痛みはだいぶ引いている。
とはいえ、出されたお肉を北ヶ瀬さんに切ってもらいながら、こうしてフォークで突き刺して食べることしかできないのはやっぱり少しもどかしい。
だから北ヶ瀬さんは個室のあるこのお店を選んでくれたのだと思う。
こういうさりげない優しさに、きっと私は惹かれている。
「(この優しさが、私だけに向けばいいだなんて……傲慢、かな)」
こうして北ヶ瀬さんと面と向かって食事をするのは、あの大晦日の夜以来だ。
その優しい眼差しも、声のトーンも、看病してくれていたあの頃と何も変わらない。
「(でも、友達だって言われたしなぁ)」
あんなふうにはっきりと線引きをされた以上、これからどうやって北ヶ瀬さんとの距離を縮めていけばいいのか分からない。
それに、私自身も彼のことが好きだからといって今後どうなっていきたいかという明確な答えはまだ持っていない。
「(あぁ、ダメだ!今は先に、目の前の問題に集中しないと!)」
私はグラスの水を一口飲んで、思いきって本題を切り出した。