あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「あの、北ヶ瀬さん。今日はお兄さんの結婚式の打ち合わせですよね?」
「ええ、そうでしたね。兄の挙式と披露宴は、三月の第一土曜日と決まりました。和泉さんの衣装などは全部こちらで用意するので、当日の朝は予約しているサロンへ向かっていただくようになりますから、またお迎えにあがりますね」
「全部用意してくれるんですか!?」
「もちろんです。これは僕のわがままなので」
「わがままだなんて、そんな。……でも、一つだけ聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょう?」
北ヶ瀬さんは私の話を聞いてくれるとき、いつも手を止めて必ず目を合わせてくれる。
彼のことが好きだと自覚してから、これまで気づかなかった些細なところにまで目がいくようになった。
「どうして私を、お兄さんの式に連れて行くんですか?」
まっすぐにそう尋ねると、一瞬、北ヶ瀬さんの手がピタリと止まった。
「それは……最初にお会いした時から、同伴してくれる方を探しているとお伝えしていたかと」
「はい!それは私も聞いていましたし、一緒に行くのが嫌とかじゃないんです。でも、一応その理由を聞いておきたくて!」
「……なるほど」
「親族間のお式や披露宴で、私が行く意味を知っておいたほうがいいかなって思いまして」
静かなレストランの個室に、沈黙が落ちた。
北ヶ瀬さんは少し困ったように視線を伏せ、やがて観念したように小さく息を吐いた。
「……由希子さんから、僕の実家が呉服店だということは聞きましたか?」
「はい。老舗の、立派なところだって聞きました。ホームページも見ました!」
「僕は今、実家から勝手に決められた結婚相手と──……お見合いを強く迫られているんです」
「えっ……お見合い?」