あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「えっと、彼は私の仕事の同僚です!新卒からずっと同じ部署の同期で、前は帰宅時間が合えばよくご飯に行くような仲だったんです」
「……同僚、ですか」
「はい。今ではもう、よきライバルです」
白石からの告白を断ってからも、彼は以前とほとんど変わりなく接してくれている。
相変わらず私の右手をカバーしてくれるし、同じプロジェクトでは臨機応変に仕事を入れ替えしてくれる。
唯一変わったことがあるといえば、めっきりご飯に誘われなくなったことくらいだ。
仕事の終わり時間が重なっても、前みたいに居酒屋に行こうとは言われなくなった。
でもそれはきっと、白石なりの誠意だと思っている。
「そうだったんですね。よかった」
「え?」
「いえ、なんでもありません」
そんな私の答えを聞いた瞬間、北ヶ瀬さんの肩からスッと力が抜けたのが分かった。
北ヶ瀬さんは心底ホッとしたような、今日一番の柔らかい笑顔を浮かべる。
「(……今の反応。少しは期待してもいいってことなのかな)」
「すみません、話が逸れてしまいましたね。それで、親族が揃う兄の結婚式の場で、両親が勧める女性と一緒に参列させようと勝手に段取りを組んでいるらしくて」
「そんな……!じゃあ、お兄さんの結婚式にもそのお見合い相手の方がいらっしゃるんですか?」
もしそうなのだとしたら、かなり気まずいことになりそうな予感がしてならない。
私は北ヶ瀬さんとは友達という関係から一歩も前に進めていないまま、彼のご両親が推薦するお見合い相手を差し置いて式に参加することになる。想像しただけで修羅場になるのは目に見えている。
「いいえ、それは大丈夫です。和泉さんと鉢合わせしたあの日、彼女にきちんとお伝えしておきました。兄の結婚式には他に一緒に参列したい方がいるので、両親から招待されても無視して大丈夫だ、と」
「そう、だったんですか」
「僕は両親や親族達に〝結婚する相手は自分で決める〟という意思表示をしたいだけだったんです。だから日本に帰国してから、兄の結婚式に一緒に参列してくれる方をずっと探していたんです」
「そういう理由だったんですね」