あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。






 なんだか少しだけ、気持ちがラクになった。




 「僕の勝手な都合に巻き込んでしまって、本当に申し訳ありません」

 「あ、いえ!そこは気にしないでください!だって私が最初に、たとえどんなことがあっても友達以上の関係にはなりませんと条件を出していたように、北ヶ瀬さんもお兄さんのお式の条件を出していたじゃないですか!お互いにその条件を飲んで出会った仲なんですから!だから全然気にしないでくださいね!」

 「ありがとう、和泉さん。その代わりと言ってはなんですが、準備はすべてこちらで用意するので、当日和泉さんは手ぶらで来てくださって大丈夫ですからね。ご祝儀とかもいらないので」

 「……はい」




 別に期待していたわけじゃない。

 最初から分かっていた。




 でも、心のどこかで期待していたのかもしれない。

 もしかしたら、私だから一緒に結婚式に参列して欲しかったのかな、とか。

 私だから、選んでくれたのかな、とか。



 少し前まで私はそれをまったく望んでいなかったはずなのに、今ではこんなにも悲しくなってしまうなんてただのわがままだ。


 北ヶ瀬さんの仲で、私はまだ『友達』なんだ。

 少し前までの私が望んでいたそのままの関係にいるんだ──。




 「分かりました!要するに私は、北ヶ瀬さんのご実家からの結婚しろ攻撃の盾となるためのカモフラージュってことですね!それなら納得です、ドーンと任せてくださいね!」

 「和泉さん……?」






 けれど、そういうことなら話は早い。

 そこまで一人で気負う必要もなければ、ただ単純に北ヶ瀬さんの隣にいればいいだけのことだ。




 「(なんだ、そっかそっか……)」

 挙式が三月だということは、とっくにこのギプスも外れて外見は問題なくなるはず。



 「北ヶ瀬さんにはこれまで散々お世話になりっぱなしですし、完璧なパートナーを演じてみせますから、安心してください!」

 「……っ」



 私のその言葉に、北ヶ瀬さんはどこか複雑そうな、寂しそうな微笑みを浮かべたような気がしたけれど、その時の私は自分の気持ちを振り払おうと気合が入りすぎていて、彼の微妙な表情の変化に気づく余裕なんてなかった。






< 106 / 129 >

この作品をシェア

pagetop