あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
怖いんだ、彼と今の関係が変わってしまうことが。
辻村くんのときもそうだった。
最初はいろんな場所へ出かけたり、毎日連絡を取り合って、その日合ったことや面白かったことを絶え間なく共有していた。
けれど付き合いが長くなるにつれて会話は減って、毎週金曜日にご飯に行って、休みが合えば辻村くんの家でテレビや映画を観るだけのつまらないものになってしまっていた。
北ヶ瀬さんがそんな人じゃないってことはもう十分に分かっている。
あの優しさも、気遣いも、取り繕った上辺だけのものじゃないことだってもう知っている。
だけど、どうしても怖くてたまらない。
恋人、結婚、妊娠、出産──……。
いろんなことが変わっていくのが、怖いんだ。
胸を締め付けるような鈍い痛みを誤魔化すように、私はギュッと膝の上のドレスの生地を握りしめて前を向いた。
──……
厳かな式が終わって、会場を移しての披露宴に移った。
そこからはもう、まさしく戦場だった。
「夏樹さん、その女性は……?」
「今日は東條家のお嬢様と一緒に参列するはずじゃなくて?」
「お隣のお嬢様はどちらのお家の方?」
案の定、歓談の時間になるや否や、北ヶ瀬家の親戚の方々が私達のテーブルへ詰め寄ってくる。
そのあからさまな重圧に足がすくみそうになったけれど、そっと北ヶ瀬さんが私の手を握ってくれたおかげで冷静になることができた。
社会人歴七年の間に培ってきた営業スマイルと会話の弾ませ方を、ここで存分に発揮する。