あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「初めまして。夏樹さんといつも親しくさせていただいております、高野と申します」
完璧なビジネスパートナーを演じきる私に合わせるように、彼もまた、堂々とした態度で親族の前に立ちはだかる。
「東條家の彼女なら今日ここには来ていませんよ。それから何度もお伝えしているように、お見合いの話はお断りします」
「そうは言ってもね、夏樹さん。いずれはあなたを支えてくれる人を見つけないと、でしょう?」
「そうですよ?いくら北ヶ瀬家の次男とはいえ、将来社長さんになるお兄様を助けていかなくちゃ。そのためにはやっぱり家族というものは必須になりますよ?」
「兄がしたように、僕も結婚相手は自分で見つけますから、どうぞ心配なさらないでください」
「いやぁ、あなたのお兄様は、ほら……天真爛漫というか、強引なところがおありでしょう?この人と結婚できないなら家を継がないとまで言い出したときはビックリしましたよ?」
「僕も兄と同じ気持ちです」
お兄さん達の披露宴の真っ最中だというのに、ここまで詰め寄ってこんな時代錯誤なことを言われ続ける北ヶ瀬さんがとても不憫に思えた。
これまでも相当嫌なことばかり言われ続けているであろう北ヶ瀬さんは、ピクリとも表情を変えずにキッパリと言い放った。
こんな嫌な重圧に、何年も押さえつけられてきたのだろうか。
「(私なんか全然役に立たないだろうけど、少しでも北ヶ瀬さんの盾に慣れていたらいいな)」
どれだけ北ヶ瀬さんが話を断ち切ろうとしても、どんどん食い下がってくる親戚の人達。
「あの──!」
私は耐えきれなくなって、大きな声で断ち切った。
「私達、少しお直しをしてきますので失礼しますね!」
「……和泉さん」
「行きましょう、夏樹さん!」
そう言って私は強引に北ヶ瀬さんの腕を引いてこの場を抜け出す。
またあの冷ややかな視線に突き刺されながらも、全部無視して会場を後にした。