あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「和泉さん、疲れたでしょう。本当にごめんね」
会場から少し離れたところにあるロビーで、私達はようやく呼吸ができたと言わんばかりに大きく息を吸い込んで吐き出した。
「いえ、全然平気ですよ!職場のクライアントにも、あんなふうに全然切り上げてくれない人たくさんいるので……!」
「ここに連れてきてくれて助かりました。……あ、そうだ喉乾いたでしょう、飲み物を取ってきますね」
北ヶ瀬さんが席を外したのを見送って、私は壁にもたれながらもう一度「ふぅ」と安堵の息をついた。
変な愛想笑いが続いたせいで、頬の筋肉がピクピクと引き攣っているのが分かる。
「──君が夏樹の連れの女性、で合ってるかな?」
「え?」
「君に苦労をかけているみたいだね、すまない」
そのとき、不意に声をかけられて、私はビクッと肩を震わせて背筋を伸ばした。
そこに立っていたのは、今日の主役である新郎──……夏樹さんのお兄さんである裕一さんだった。