あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。






 「──私、北ヶ瀬さんのことが好きです」

 「え?」

 「でも、私じゃあ北ヶ瀬さんの夢を叶えてあげることはきっとできない。あなたの夢を奪うだけのお荷物になってしまう。北ヶ瀬さんには、同じ夢を見てくれる人と一緒に、ちゃんと幸せになってほしいから……だから、私達、もう会うのはやめましょう」



 これでいいんだ。

 これが正しい選択だ。



 北ヶ瀬さんに嫌われたいわけじゃない。

 ただ、自分の意固地な人生観のせいで、彼の未来を縛り付けたくなかった。




 このまま一緒にいれば、私は絶対に北ヶ瀬さんを手放せなくなってしまう。

 そうなる前に終わりにしなくちゃいけない。




 私は絞り出すようにそう告げると、掴まれていた手を振り解こうと体を捩った。

 これで終わりだ。


 できることなら、もっと北ヶ瀬さんと一緒にご飯を食べに行きたかった。

 できることなら、もっと楽しいことを一緒に共有したかった。

 できることなら、もっともっと、北ヶ瀬さんと一緒にいたかった。





 「(さようなら、北ヶ瀬さん──)」

 そっと腕を払って、彼の元を離れる。








 けれど、北ヶ瀬さんは私を離さなかった。

 もう一度私の腕を掴みなおして、包み込むように強く引き寄せた。






< 119 / 129 >

この作品をシェア

pagetop