あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「──海外?」
ガツンと、何かで打たれたように目の前が真っ暗になった。
「はい。だからこれ以上和泉さんが僕のために悩む必要もないんですよ。今以上に親密になって困らせるようなこともありませんから」
「そんなっ、なんで……急に」
「だからせめて、僕が発つまでの間だけでも……今までどおり〝友達〟でいさせてくれませんか?」
──北ヶ瀬さんが、遠くへ行ってしまう。
もう会えなくなる。もう、私の隣であんなふうに優しく笑ってくれなくなる。
〝関係が変わるのが怖い〟
〝ライフスタイルが変わっていくのが怖い〟
〝結婚というプレッシャーが嫌い〟
今までの鬱々とした不安や恐怖が、一つずつ私に降りかかってくる。
──結婚したら、仕事はどうするの?
──一緒に住み始めたら、家事やお金はどんなふうにやっていくの?
──もしもお互いの価値観が合わなくて、すれ違いが増えたら?
──喧嘩するなんて面倒くさい。
──一人の時間が好き。
そしてそれらがまるで呪いのように重くのしかかってくる。
「引き留めてしまって、ごめ……」
「一緒に、行きたい」