あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
店内はほんのりと落ち着いた照明が冬ならではのBGMと相まって素敵な空間を作り出している。
中に入った瞬間に鼻をかすめたトマトの匂いや上品なお肉の匂いに、私のお腹は少しずつ食事の準備を始めていく。
「お席はこちらになります」
二階の一番景色がよく見える窓際の席に案内されて、私達は向かい合うように腰をかけた。
「ちょうど街中のライトアップが綺麗に見えますね」だなんて他愛もない話をしてくれる北ヶ瀬さんとは正反対に、私は今にも叫び出してしまいそうなくらい緊張の糸が張りつめている。
「今日はお会いできて光栄です。お仕事終わりに時間を割いてくださってありがとうございます」
北ヶ瀬さんはそう言って、店員から受け取ったメニュー表を私に「どうぞ」と手渡してくれながら、さりげなくこちら側から見やすいように広げた。
「あ、ありがとうございます。こちらこそ、あの、事前にたくさん質問を投げてしまってすみませんでした」
「アハハ!全然構いませんよ。僕もこういうアプリを使って誰かと出会うというのは初めての体験だったので、和泉さんがご不安に思う気持ちはよく分かります」
「マッチングアプリ、初めてなんですか?」
「えぇ。日本にいる友人にちょっと強引に勧められまして……。お恥ずかしながらスマホでこういった操作もあまり得意ではないので、ほとんど彼に手助けしてもらいながら、なんとか」
「私も一緒です!友達に登録まで進められちゃって、よく分からないまま自己紹介の部分だけ一生懸命書きました」
「なるほど。考えられた末の〝お友達募集中!〟だったのですね」
「は、はい……」
「じゃあ今日は僕からもいくつか質問をしてもいいですか?……もっと和泉さんと〝お友達〟になるために」
「も、もちろんです!」