あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
北ヶ瀬さんは悪い人じゃない。
むしろ私より何倍も優しくて、気が遣えて、穏やかでいい人だ。
それなのに話も面白くてユーモアやセンスも兼ね備えている。
加えて十代のころから今までずっと海外で学んで働いていたというエリートだ。きっと相当頭が良くなくければできないことだと思う。
そんな彼が、本当にこのまま私と一緒にいていいのだろうか。逆に申し訳ないという気持ちが芽生えて仕方ない。
「僕はきっと、恋愛には向いていないんです。……まだ希望を捨てたわけじゃないんですけどね」
グラスに少し残っていたノンアルコールのシャンパンを飲み干して、北ヶ瀬さんは眉をハの字に曲げて悲しそうに微笑んだ。
「(……もしかして、北ヶ瀬さんも私と同じ?)」
「友人が僕にマッチングアプリを勧めた理由は、海外生活が長かったせいで日本に友達があまりいないからです。これからは日本で暮らす予定なので、まずは気軽に友達としての関係を構築できる人を探してはどうか、ということからこのアプリの存在を教えてもらいました」
「そんな経緯が……」
「あと、兄の結婚式に一緒に出席してくださる女性を探していました」
「お兄さんの、結婚式に?」
「はい。けれど僕の友人からマッチングアプリは恋人を作ることが一番の目的だとも聞いていたので、どうしたものかと悩んでいたとき、一番に和泉さんのプロフィールがオススメという欄に上がってきたんです」
「……!」
「自己紹介に書かれている文章がとても面白くて、でも真剣にお友達を探そうとしている様子も見受けられたので、それで僕はあなたにメッセージを送りました」
「友達にはあの紹介文を読まれて頭がおかしいんじゃないかと言われちゃいましたけどね……」
「僕は和泉さんしかいない、とさえ思いましたよ」
「……!」