あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「もしよければ近くまでお送りします。今日は冷えますし、僕は車で来ているので」
「よ、よろしいんですか?」
「はい、もちろんですよ」
お店を出ると、今にも雪が降りそうなほど気温がグッと下がっていた。
北ヶ瀬さんは駐車場に停めてあった自分の車の助手席を開けて私を誘導してくれる。
そして後部座席からふわふわのブランケットを差し出して、そっと膝下へかけてくれた。
「き、北ヶ瀬さんちょっと紳士すぎませんか!それってイギリス仕込みですか?それともアメリカ産ですか!?」
「……ぶっ!そんな、食品みたいな言い方をされたのは初めてです」
「だ、だって……!」
「じゃあ、多分イギリス……ですかね」
「アッハハ!なるほど、噂に聞く英国紳士ってやつですね!」
「嫌だったら言ってください。一層気をつけるので」
別に嫌じゃないから逆に困るんです、とは言わなかった。
北ヶ瀬さんがとてもいい人だからだろうか。
それとも見た目が好みのタイプだから?
どちらにしても、今日、彼と出会えて本当によかった。
家から最寄り駅までの道のりを送ってもらいながら、今年最後の大イベントであるクリスマスを今か今かと待ち構えている綺麗に装飾された街中を、車のガラス越しに見てそう思った。
「今日はありがとうございました。ご馳走してもらって、家の近くまで送ってまでもらうなんて贅沢すぎました!」
「いえ、こちらこそ。仕事終わりで疲れているだろうに、わざわざ僕と会ってくださってありがとうございました」
「じゃあ、私はこれで……」
「──また今後、って言ってもいいですか?」
「え?」
「今度は和泉さんがピックアップしたお店に行ってみたいです」
「わ、分かりました!美味しいところ探してお誘いしますね!」
「……うん、ありがとう。気をつけて帰ってくださいね」
「北ヶ瀬さんも!おやすみなさい!」
久々に楽しい平日の夜だった。
これまで経験したことのないワクワク感がずっと私を昂らせる。
──ピコンッ。
家について玄関を閉めた途端、コートのポケットに入れていたスマホが鳴った。
悴む手で画面を確認すると、そこには一通のメッセージが入っていた。
【同窓会の開催時間変更のお知らせ】
「あ、そういえば同窓会があるんだった」
……あれ、そういえば辻村くんって参加するのかな。
付き合っていたころ、予定が合えば一緒に行こうと、そんな話をしていたような。
「ど、どうしよう……」
同窓会で元彼と鉢合わせになって気まずい雰囲気になる。
この展開だけは避けなくちゃ。