あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
けれど彼とお付き合いをしていた二年間、ずっと〝好き〟以外の気持ちを持って過ごしてきたわけじゃない。
本当に好きだったよ、ちゃんと。辻村くんと一緒にいて楽しかったし、二人で作ってきた思い出は忘れない。
それでも、同棲だとか、結婚だとか、そういった現実が少しずつ近づいてくるにつれて怖くなった。今のライフスタイルが変わってしまうことが恐ろしいと思うようになった。
自分以外の誰かと一緒に生活を共にして、いずれ結婚して、家庭を築いていくという想像が私にはまったくできなかったんだ。
「(辻村くんとの未来を考えたとき、楽しみよりも不安や恐怖のほうが強かった……)」
三十代を目前に控えた今、きっと誰が聞いてもその選択は間違いだって言うだろう。
だけど結婚よりも独り身高級老人ホームの選択をしてしまうくらいに、私は「今」を変えることのほうが怖かった。
「……あれ?ねぇ、あれって由希子じゃない?」
「え、由希子こっちに帰ってきてたの!?」
過去を振り返っては鬱々としていた私の元に、里英の飛び跳ねるような声が届いた。
ハッとして顔を上げると、里英が指さす方向には確かに由希子の姿があった。
会場の真ん中で、他の友人達と楽しそうに大騒ぎしながら盛り上がっている中心にいる彼女。
由希子とは高校二年のとき、同じクラスになったことをきっかけに急激に仲良くなって、里英達二人は大学も同じところへ通っていた。
三年前に結婚を機に旦那さんの実家がある広島県に住むことになってからというもの、会う機会は激減してしまっていたから、今日こうして予想だにしなかった彼女の姿を見て途端に嬉しくなった。