あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。





 北ヶ瀬さんと初めて会ったあの日から、約束どおり今度は私がお店を探して彼をランチに誘った。

 割とリーズナブルに食べられる鉄板焼きのお店を選ぶと、北ヶ瀬さんはとても気に入ってくれたみたいでホッとした。



 イギリス仕込みの紳士な北ヶ瀬さんはどこへ行っても支払いを済ませてくれそうになるけれど、そこはお友達なのだからと割り切ってなんとか自分の分だけはお金を払っている。

 けれど北ヶ瀬さんはそのあとに必ずカフェやパン屋に寄ってくれて、いつも私にたんまりとご馳走してくれる。

 そして最後には必ず家の近くへ送ってくれるまでがセットで付いてくるから、どこまでも至れり尽くせりで申し訳なるほどに優しい人だ。




 「和泉はそれで満足なの?」

 「うん、自分でも驚くくらい満足してる」

 「……」

 「北ヶ瀬さんとはこの関係のままずっといたい」



 里英には都合がいいだけの関係だと思われているだろうか。

 だけど、私も北ヶ瀬さんもWIN-WINの関係だと思う。


 私は北ヶ瀬さんと男女の関係にはならず、友達として気軽に遊んだりご飯を食べたりしたい。

 北ヶ瀬さんは日本で友達がほしい。そして、お兄さんの結婚式に一緒に出席してくれる女性が必要。

 お互いに提示した条件に合う関係性だ。やましいことをしているわけでも、ましてや法に触れるようなことも一切していない。



 「ずっとその関係でいられるといいけどね」

 「どういう意味?」

 「……ま、和泉がいいならいいけど」

 「ちょっと!意味深発言したまま放置しないで!気になるでしょ!?」


 何かを孕んだような言い方の里英は、それ以上北ヶ瀬さんとのことは何も聞かずに「ご飯食べようよ」と言って私に大皿を手渡した。





 それから私達はレストランの美味しい食事を堪能しながら、懐かしい友達とたくさん話した。

 学生当時の思い出話、担任の先生の話題、そして社会人になった今、それぞれの会社の愚痴や自慢話まで、本当にたくさんの会話が飛び交った。



 みんな大人になっていた。

 あの頃とはすっかり変わっていて、今、誰もが自分の人生を生きている──。




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