あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「──あのさぁ、女は別に三〇歳までに結婚したいとか思わないから」
「!?」
テーブルの下に身を潜めていた私はゆっくりと這い上がって、服の皺を直しながら再び席についたとき。
ガラスの衝立てから隣の席に顔を覗き込ませながら立ち上がってそう言ったのは由希子だった。
「何歳だろうと、心の底から結婚したいって思う人とじゃないと女は覚悟決めないよ?」
「ゆ、由希子!?」
「それとねぇ、辻村くん。そういう話はさ、周りをよく見てから話しなね?どこで誰が聞いてるか分からないでしょ?」
由希子の鋭い言葉が辻村くん達の席にグサグサと刺さっていく。
突然の由希子の登場に驚いているのか、彼らは誰一人言葉を発さない。
辻村くんは由希子や里英が私の友達だということは知っている。だからきっと、ここに私がいると言うことも察しているだろう。
不透明なガラス越しに、彼と視線が合わさったような気がした。
向こうの反応を待たないまま、最後に由希子は「あ、でもあたし達はもう帰るからどうぞ続きを〜」と言ってこちらへドサッと座り直して、帰り支度を始める。
里英は紙ナプキンで私の涙を拭ってくれながら、「だから堂々としてればいいんだって言ったでしょ?」と言った。