あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「あ、えっと……楽しかったですよ!懐かしい友達にも会えましたし!」
「そうですか、ならよかった。無事に帰宅できましたか?電車が混み合っているようなら、迎えに行きますよ」
「……」
「和泉さん?」
スマホ越しに聞こえる北ヶ瀬さんの声に、頭がぼんやりとする。
お酒が入っているせい?それとも泣き腫らしてしまったせい?
「元彼に、会っちゃったんです」
「……え?」
「それまで振られた原因は全部私にあると思っていたんですけど、どうやら違ったみたいです」
「……」
「向こうも私のこと、好きかどうか分からなかったって。結婚なんて諦めてたって……」
「……」
「でもね?私はそんな彼の本音が聞けたおかげで罪悪感も薄れたし、なーんだ、そうだったんだ!って知れて心は軽くなったはずなのに……なんでか気持ちがまだ晴れないんです」
あぁ、私はバカだ。
こんなこと、なんの前情報も知らない北ヶ瀬さんに言ったところで理解してもらえるわけもないのに。
しかも元彼のことなんて、絶対に今北ヶ瀬さんに話す話題ではなかった。
「ご、ごめんなさい!今のは全部忘れてください!」
「……和泉さん、今どこにいますか?迎えに行きます」
「い、いいです!大丈夫です!私、こう見えて結構タフな性格で、ぐっすり眠れば大抵のことは一人で解決できるタイプなんです!」
自分でも分かるくらいに、今、私は面倒な女になってしまっている。
こういうときは一刻も早く家に帰って、熱々のお風呂に入って、思う存分眠ってしまうのが一番の薬だ。
今までだって仕事でミスをして落ち込んだ時や、商談がうまくいかなかったときはこうして一人で自分の機嫌を取ってきた。
今回のことだって、同じようにすればきっと大丈夫。
だって私はこれから先ずっと一人で生きていくんでしょ?
だったらこのくらいのことで、いちいちヘコたれてなんかいられないじゃない。