あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「和泉さん。僕達、友達……ですよね?」
「そ、そうです」
「友達は楽しいときだけじゃなくて、悲しい時やつらい時、ちょっと愚痴をこぼしたい時も一緒にいるものですよ」
「……っ」
「場所、教えてください。簡単でいいので」
「で、でも……」
「お腹に余裕があれば一緒にらーめんでも食べに行きませんか?ちょうど和泉さんにお勧めしたかった場所があるんです」
いつになく強引な北ヶ瀬さんに言われるがまま、私は今いる駅を伝えると、「十分で着くので温かい場所にいてください」とだけ言って電話を切られてしまった。
スマホが表示している時間は、もうすぐ日付を跨いでしまいそうな時刻だった。
私は北ヶ瀬さんに言われたとおり近くのコンビニに入って待っていると、彼は本当に十分もかからないうちに私の元へ来てくれた。
私の姿を見つけるとすぐにコンビニの中まで駆けつけてくれて、そしていつもと同じエスコートの仕方で車の助手席のドアを開ける。
北ヶ瀬さんの車に乗り込むと、私は一目散に謝った。
「す、すみませんこんな遅い時間に……!北ヶ瀬さん、今日もお仕事だって言ってましたよね!?」
「いえ、今日は簡単なミーティングだけだったので全然大丈夫ですよ」
北ヶ瀬さんの優しさは、ちょっぴり危険だ。
気を抜けば依存してしまいそうになる。
「気分は少し落ち着かれましたか?僕でよければ話、聞きますよ」
「……とりあえずらーめん、行きませんか?北ヶ瀬さんがお勧めだっていうらーめん、私すごく気になってます」
「アハハ!そうですね、そうしましょう。まずはお腹を満たしましょうか」
そう言って北ヶ瀬さんが連れてきてくれたお店は、味噌らーめんを提供している屋台だった。
透明な分厚いシートで囲われた年季の入った屋台は、お客さんも五人しか座れないほどの広さしかない。
「い、いい匂い〜」
「僕が一番美味しいと思っているらーめん屋です。和泉さん、こういうところ苦手じゃないですか?」
「私、こういうお店が実は大好きなんです!」
「よかった。さぁ、座ってください」
「でも少し意外でした。北ヶ瀬さんはイタリアンとかフレンチとか、そういうご飯を好むイメージがあったので」
「本当ですか?……じゃあまた一つ、僕のことを知ってくれましたね」
「そ、そうですね!」