あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「そうだ、白石は……って」
……いるはずないよね。
私より何倍も多忙な白石がデスクに座る暇なんてあるわけがないし、そもそも白石に頼ろうとすること自体が間違いだ。
案の定、隣の席はどっさりと山積みの資料やサンプルで溢れかえっているだけで、そこに本人の姿はない。
あぁ、どうしよう。
その場にしゃがみ込んで、頭をフル回転させていく。
「(──北ヶ瀬、さん)」
ふいに思い浮かんだ、北ヶ瀬さんの顔。
確かメッセージが届いていたのは数分前のことだった。
きっと今頃空港に到着したばかりじゃないだろうか。
空港にはデパ地下に劣らない老舗のお店がたくさん入っているはず。
けれど、だからといって北ヶ瀬さんにこんなことをお願いするべきじゃない。
それは分かっている。北ヶ瀬さんに頼むのは間違いだということは百も承知だけれど、頼れる人がもう彼しかいない。
「……っ」
私は藁にもすがる思いでスマホを耳に当てがった。
『はい、北ヶ瀬で──……』
「北ヶ瀬さん、今空港にいますか!?」
『え、あ、うん。今ちょうど着いたところです。どうかしましたか?』
「あの、本当にごめんなさい!こんなこと北ヶ瀬さんに頼むのは間違ってるって分かってはいるんですけど、どうしても今、頼れる人が北ヶ瀬さんしかいなくて、それで、えっと……っ!」
『──和泉さん、大丈夫ですよ。なんでも言ってください』
息継ぎもせずに大慌てで喋る私とは正反対に、心地よい落ち着いた声が少しだけ私を冷静にしてくれる。
北ヶ瀬さんのその声に、なんだか泣きそうになるのをグッと堪えた。
「あの、空港に入っている老舗の和菓子屋さんで手土産を一つ買ってきてもらえないでしょうか!」
『えぇ、分かりました。では今からお店に直行するので、必要な人数とどのような手土産が必要なのか、それから接待の場所をメッセージに入れておいてもらえますか?和泉さんの職場と空港の中間地点をお送りするので、そこへ向かってきてください。後で落ち合いましょう』
「は、はい!ありがとうございます!」