あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
***
「──北ヶ瀬さん!」
北ヶ瀬さんから送られてきた待ち合わせ場所へ着くと、ハザードランプを点滅させた一台の車がすでにそこに停まっていた。
これまで何度も私を送り迎えしてくれた北ヶ瀬さんの黒色の車を見た途端、それまで張り詰めていた緊張が少しだけ解けた気がした。
急いでタクシーを降りて走りながら駆け寄ると、私に気づいた北ヶ瀬さんも運転席から降りてきてくれる。
久しぶりの彼の姿に、自然と笑みが溢れた。
「和泉さん、これ。無事に買えましたよ」
そういって手渡されたのは、誰もが名前を知る京都の超老舗和菓子店の、見るからに重厚な桐箱の包みだった。
予約なしでは絶対に買えないと噂の、一般の売り場には並ばないはずの高級なそれ。
「え、北ヶ瀬さんこれ! 店頭に並べられていない、予約必須の菓子箱ですよね!?どうして……」
「実は、実家とここのお店に繋がりがありまして。和泉さんの電話のあとすぐに連絡を入れてみたら、快く用意しておいてくれました」
「すごい、ありがとうございます!これで堂々と接待に乗り込めます!……あ、そうだレシートか領収書いただけますか!?お支払いはあとで必ずしますから!」
「そんなものはあとで大丈夫ですから、まずは無事にお仕事を済ませてきてください」
「で、でも」
「ほら、今日は雪のせいでどこも混み合っているようですから行きましょう」
北ヶ瀬さんはそう言いながら、私に手土産を持たせて待たせていたタクシーがいる場所まで着いてきてくれる。
隣に彼がいるというだけで、どうしてこうも安心できてしまうんだろう。
本当に、私にはもったいないくらいの友達だ。
一緒にいるといつだって楽しくて、面白くて、心が軽くなる。
「(これって私達が友達だから、だよね?」