あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「では、頑張ってきてくださいね」
「はいっ!北ヶ瀬さん、本当に本当にありがとうございました!」
タクシーの後部座席のドアが開いて、私は北ヶ瀬さんから受け取った大事な手土産を抱えながら乗り込んだ。
そして車のドアに手をかけた私を呼び止めるように、北ヶ瀬さんの声が降ってきた。
「──それから」
「はい?」
「もし和泉さんがしんどくなければ、このあと少しだけ会えませんか?」
「え……?でも、今日は大雪ですし、私何時に終わるか全然見えなくて、ずっと北ヶ瀬さんを待たせてしまうのは申し訳ないです」
「何時になっても構いません。どうしても、今日のうちに和泉さんに会いたかいから」
「……!?」
真っ直ぐな彼のその言葉に、トンッと心臓が飛び跳ねた。
「(ずっと北ヶ瀬さんに会いたいと思っていたのは、私だけじゃなかったんだ)」
北ヶ瀬さんも私に会いたいと思ってくれていた、その事実がものすごく嬉しかった。
「……分かりました。じゃあ終わったら連絡しますね」
「ありがとう。気をつけて行ってきてね」
北ヶ瀬さんが一歩タクシーから離れると、車はゆっくりと発車していく。
だんだんと遠ざかっていく彼の姿を、私はずっと見つめていた。