あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。






***



 北ヶ瀬さんのおかげで、接待は遅刻することなく向かうことができた。

 さらに用意してもらった極上の和菓子は、みんなから「よくここのお店の菓子折りが買えたね!」と大絶賛で、莉里ちゃんへの引き継ぎもこれ以上ないほど円満に収まった。



 「今日は本当に楽しいお時間をありがとうございました。今後とも弊社をよろしくお願いいたします」

 けれど、接待が終わったのは時計の針が深夜二十四時を過ぎた頃だった。

 気分を良くした総支配人やお偉い様方から二次会、三次会まで誘われてしまい、ようやく彼らを見送って解放された私の身体は、冷たい夜風を浴びて一気に冷え切っていった。



 これまでも幾度となく接待に参加してきたけれど、終わった瞬間にやってくるこの疲弊感だけは未だに慣れない。

 長時間に及ぶ気遣いと愛想笑いと、絶え間なく話題を振り続ける労力。それに加えてアルコールのせいで頭がボーッとしてしまう。



 ただ、明日から年末年始の長期連休が待っていることだけが今の私の救いだった。

 「もう十二時過ぎてるじゃん。さすがにもう、北ヶ瀬さんも帰っちゃってるよね……」



 念のため約束どおり『今終わりました』というメッセージと一緒に自分の位置情報を送ってみたけれど、いくらなんでも、あれからかなり時間も経っている。

 大寒波のこんな雪の中、さすがに北ヶ瀬さんも諦めて家に帰っているに違いない。


 そう思いながら、冷たい空気を体いっぱいに吸い込みながら駅の方へ歩き出そうとした、そのときだった。




 「──和泉さん!」

 「……!?」






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