あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
「それが孤独、かぁ」
例えば一人でキッチンの前に立って、自分のためだけのご飯を作っているときもそうだ。
普段はそんなこと思いすらしないのに、何かを境に『私は一生こんなふうに自分のためだけのご飯を作り続けなくちゃいけないのだろうか』と途端に泣きたくなるときがくる。
里英や他に結婚していった友人達から『旦那のご飯作るのが一番面倒』だなんて愚痴を聞いて、「確かに毎日ご飯作りしなくちゃいけないのは大変だよなぁ」と共感すらしていたのに、それでも私の心は疲れたり弱ったりするとすぐに孤独という悪魔に取り憑かれてしまう。
最近の世の中はありがたいことに『おひとり様コンテンツ』の充実がめざましい。
おひとり様映画に、おひとり様ご飯に、おひとり様エステ。ある一定のお金があれば、ある一定の幸せは一人でも手に入れられるこのご時世。
けれど、それでも〝孤独〟に対抗できるものは未だに存在しない。
現代のあらゆる技術を駆使しても、心の中に巣食う悪魔を退治する方法は見つからない。
「……ね?やっぱり高級老人ホームに入るためだけに生きていくなんて無理でしょ?」
「でも私、もう本当に恋とかはしたくないの。なんていうんだろう、面倒くさいが勝っちゃう……」
「マッチングアプリでも始めて気軽に会える人探したら?」
「マ、マッチングアプリ!?」
「このままだと和泉、一生孤独を感じながら独り身で最後は孤独死……なんてこともあり得るかもよ?」
「なっ、里英最低!咲良ちゃん、こっちにおいで!あなたのママは鬼になってしまったわ!」
考えたくもないような未来を平気で言ってのけた里英から、私は咲良ちゃんを奪ってやろうと「こっちへおいで」と両腕を広げて見せると、キャッキャと笑いながらこちらへ手を伸ばしてくれる。
里英からバトンタッチして咲良ちゃんを抱っこすると、温かくて、小さくて、それなのにずっしりと重たくて、なんだか不思議な気持ちが込み上げてきた。
「はぁ、重たかったぁ。あ、手とか疲れたらそこのベビーベッドに寝かせてくれたらいいからね」
「……うん。でもこのまま一生抱っこしてたい」
「ふふっ。そう思うのって最初だけだから」
「いい匂いがする。かわいいなぁ」
「和泉にだって、自分の子を抱きしめるっていう選択肢があるんだよ?」
「い、いや私は……」
「あたしが言いたいのはね?今から恋愛はもうしないとか、結婚無理とか、そうやって自分の可能性を狭めるのはちょっともったいないんじゃない?ってこと」
「……」
「今から老後のことなんて考えてないで、とりあえず失恋したなら次行ってみれば?」
「うーん、でもマッチングアプリはなぁ」
「あたしの友達、もう二、三人マッチングアプリ経由で結婚してるよ?」
「それは確かに。私の友達も出会いはアプリだって教えてくれた子結構いる、けど」
「でしょ?気軽に始めてみればいいのに。あたしが独身なら速攻で登録する」