あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
マッチングアプリは正直怖いと思うところがある。
相手の身元がはっきりしないし、もしかしたら詐欺……みたいなことをされるかもしれない。
頭の中で悶々とそんなことばかり考えていた私のスマホをスッと奪い取って、里英は突然画面を操作し始める。
「あ、ちょっと里英!?」
そしてあれよあれよと設定を終わらせていった里英は、「はい、ここだけ入力して」と言いながら私にスマホを返した。
「な、なにこれ。KoiKoiアプリ?……名前からして怪しいよこれ」
「失礼なこと言うんじゃないよ。ほら、サクッと自己紹介書いちゃって?どんな人を望んでいるかとか、こういう人は無理とか、そういう条件を書き込んでいけばいいだけだから」
「ちょっ、ちょっと待ってもう登録しちゃったの!?早くない!?」
「つべこべ言わずにいいからやってみなさい!このままだと独り身孤独死ルートだよ!?」
「ぎゃっ!だからそんな縁起でもないこと言わないで!」
元中学教師の里英のお説教は怖い。
「ウダウダ言う前にやることやる!」と続けざまに怒号を飛ばしてくる里英は、私から咲良ちゃんを強引に引き取って、代わりに手のひらにスマホを突いて急かしてくる。
「じ、自己紹介?どんな人を望んでいるか?そんなのいきなり言われても分からないよ〜」
「なんでもいいんだよ。こういう人を求めています!とかさ。逆にこういうタイプの人はお断りです、とか」
「そんな殺伐としていていいものなの?」
「嫌だと思ったらマッチングしなければいいだけの話だから。ほら、手が止まってるよ」
「うっ、鬼〜!」
私はスマホと睨めっこしながら頭を捻って、何度も自己紹介文を入力しては消すを繰り返した。
そして頭をフル回転させてやっと完成したときにはもう、空の色はすっかり夕暮れのオレンジ色に染まっていた。
【いずみです。恋人は求めていません。もちろん体の関係も一切ナシです。
気軽にご飯やお酒を一緒に楽しめて、笑ったり泣いたりできる友人のような関係になれる人を募集しています。
※大切なことなのでもう一度書いておきますが、どれだけ親しくなっても恋人になることも、体の関係を持つこともありませんのであしからず。】