あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
自分の発する声が信じられないくらい冷たくて、情けないほど震えていた。
『ふぅん、そっか』
「……」
『分かった!だったらあたし、遠慮なくいかせてもらうね!』
「あ、あの由希子……っ」
『また報告するね!じゃあまたね〜!』
嵐のように電話が切れたあと、私はスマホをベッドに放り投げて、そのまま天井を見つめて深くため息をついた。
由希子と、北ヶ瀬さんが──……。
もしも二人が付き合うことになったら、これまでみたいに北ヶ瀬さんはもう私と会ってくれなくなるのかな。
それとも私と由希子は友達だから、みんなで遊んだりくらいはできたりする?
「そんなに都合よくいくわけない、か」
こんなとき、白石の言葉が嫌に纏わりついてくる。
〝でもそれって、たとえばその男に本命の女ができたら友達関係って終わりじゃね?〟
〝友達とはいえマッチングアプリで知り合った女と友達関係続けられんのは嫌だろ、恋人なら特に〟
北ヶ瀬さんともう会えなくなるかもしれない。
そう考えると、どうしようもないくらいに胸が締め付けられた。
せっかくの休みだというのに、テレビをつけてみても、お気に入りの雑誌を開いてみても、何も頭に入ってこない。
お父さんとお母さんは箱根に旅行へ行くと言っていたから、今年は帰省しないでゆっくりと一人時間を満喫するつもりだったのに。
この悩みを解消しようと、年明けに向けて家中の大掃除をしてみたり、柄にもなくお節料理に挑戦してみたり、とにかく気が晴れるようなことを片っ端からやってみたけれど、北ヶ瀬さんと由希子のことを忘れることはできなかった。
「──ダメだ、これ以上ウダウダ考えたって仕方ないじゃない!」
料理動画を見ながら完璧に仕上げたお節料理を冷蔵庫に入れてすぐ、私はスマホを手に取ってメッセージアプリを開いた。
『北ヶ瀬さん、お久しぶりです!
もし今日お時間があれば、私と忘年会しませんか!行ってみたいところがあるんです』
明日はもう大晦日だ。
本当ならこの時期に忘年会だなんて、ただ会いたいためのこじつけだって悟られてしまうかな。
でも、どうしても今年中にもう一度北ヶ瀬さんに会っておきたかった。
どうしても……、私で今年を締めくくってほしかった。
そして、送信してから一分も経たないうちに既読がついた。
北ヶ瀬さんから届いたのは、いつものように快諾を告げる優しい返信だった。