あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
昨日、由希子の一件を忘れてしまおうと一心不乱に大掃除をしておいてよかった。
普段の荒れ放題の部屋を北ヶ瀬さんに見られてしまうところだった。
……いや、だけどすでに何度も恥ずかしいところをたくさん見せてしまっている。
辻村くんとのことで大泣きして味噌バターコーンラーメンを食べに連れて行ってもらったし、帰国早々に会社の手土産を買いに走らせてしまったり、自分から誘ったビアホールで派手に転んで右腕を骨折するという情けないところまで、全部。
「(でも、こんな惨めでなせけない姿だけは見られたくなかったな)」
ビクリとも動かないこのギプスが憎らしくてたまらない。
由希子は絶対にこんな失態はしないだろう。
結婚して東京を離れるまで、由希子は誰もが名前を知っているような大手の商社に勤めるバリバリのキャリアウーマンだった。
それはもう、私の密かな憧れでもあったくらいに。
「これ、脱げなくて困っていたでしょう」
「え?」
「失礼しますね」
「……っ!」
北ヶ瀬さんを招き入れて、俯いていた私にそう声をかけてくれた彼は、優しい手つきでコートを脱がせてくれる。
さらには右手に負担がかからないよう、最後まで着替えを手伝ってくれた。
「ねぇ、和泉さん。困ったことがあったら、もっと僕を頼ってほしい」
「……っ」
「なんでも一人で抱え込もうとしないで。心配で、たまらないから」