あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。
部屋着として使っていたモコモコのカーディガンを私の肩にかけながら、北ヶ瀬さんは真剣な表情でそう言った。
あぁ、なんでだろう。
北ヶ瀬さんのその言葉が、行為が、『一人でなんとかしなければ』と気張っていた私を一つずつ溶かしていく。
前々から北ヶ瀬さんのこの優しさは危険だと思っていたけれど、今、心をすり減らしている私にはそれがダイレクトに染み込んでくる。
そして北ヶ瀬さんの優しさやあたたかさに、友達という枠を飛び超えて思いきり縋ってしまいたくなる。
「……っ」
だけど、北ヶ瀬さんの大切な年末年始の休暇を私の看病に使ってもらうのはさすがに気が引ける。
彼には彼の用事というものがあるはずだ。
特に毎日海外を飛び回るような大変な仕事をしている北ヶ瀬さんに、これ以上迷惑はかけたくない。これは本心だった。
「ありがとうございます。でも、本当にもう大丈夫です!お医者さんもビックリするくらい綺麗にポキッと折れちゃっているので、とにかく安静にさえしていたら骨も早くくっ付くよって言われたんです!」
「……」
「だからそんなに心配しないでください!痛み止めももらったし、今はもうなんていうか、一周回って笑いさえ出ちゃうっていうか!私がスッ転んじゃったこと、恥ずかしいので北ヶ瀬さんも笑い話にしてください!」
「和泉さん、全然笑えていないよ」
「……え?」
わざと明るい声でヘラヘラと笑って場を盛り上げようとしたのに、北ヶ瀬さんの表情は変わらないまま眉を少し下げて私を見つめる。
深刻な表情のまま、北ヶ瀬さんはそっと私の頬をなぞった。
「そういうのは、泣いて真っ赤になっている目も、頬についている涙の跡もちゃんと隠してから言わないと」
「あ、いや、これは違くて……」
「──和泉さんは僕と一緒にいるのが嫌?」
目尻に溜まっていた涙を、北ヶ瀬さんの細くて長い指がそっと拭っていく。